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眼精疲労による健康への影響とは? 眼科医が教えるケアと対策|秋山 友紀子

公開日2023.03.13
最終更新日2023.07.31
読み終わるまで13分
Profile
プロフィール
秋山 友紀子
日本眼科学会認定専門医

東京女子医科大学卒業。東京女子医科大学病院、総合病院などの勤務を経て、2017年より医療法人健翠会 白金眼科クリニックの院長に。2021年から、あきやま歯科眼科でも眼科診療を担当。アイケア・アイメイク商品の開発アドバイザーを務めるほか、眼科医の立場からまつ毛エクステの安全な施術についてセミナーを開催するなど、アイリストへの啓蒙活動も行う。

URL 白金眼科クリニック

PCの見過ぎでピントが合いづらくなり、頭痛の原因に?!

仕事中はPCに向かい、休憩時間もスマホが手放せないという方、多いのではないでしょうか。眼科医の秋山先生は、ここ数年「最近、目が見えにくくなった」と相談に来る20代30代が増えたといいます。
 
「お話を聞くと、コロナ禍でリモートワークになりPCやタブレット、スマホによるディスプレイを見ながらの作業が増えたとおっしゃる。そこで視力検査をすると1.2~1.5ほどで、実は見えているケースが多いですね。
 
病院で検査する日はPCをそれほど使っていないため見えるのですが、仕事でPC作業をすると、夕方ごろにピントが合いづらくなり『視力が低下した』と感じるのです」これが、いわゆる眼精疲労。
 
ピントが合いづらい、対象から距離をとらないと見えない、目が疲れる、目が重いなどの症状があり、頭痛や吐き気を伴うこともあるそう。なぜそのような症状が起こるのでしょうか?
 
「人間の目は、水晶体の厚さを変化させピントを調節します。いわば、カメラのレンズと絞りのような役割です。この水晶体を変化させるのが毛様体筋(もうようたいきん)という筋肉。遠くを見るときは毛様体筋が弛緩して水晶体が薄くなり、近くを見るときは毛様体筋が緊張・収縮して水晶体が厚くなります。
 
長時間PCやスマホを見続けると、毛様体筋が緊張・収縮した状態でこり固まり、視線を移しても緩まず遠くにピントが合いづらくなります。すると目はピントを合わせようと無理をして、目の疲れや頭痛などの症状があらわれるのです。
 
また血流障害を合併することで、目の奥の痛み、まぶたの痙攣(けいれん)を引き起こすこともあると秋山先生はいいます。

女性を悩ませるドライアイ、目元のクマ・くすみ

PCやスマホの見すぎによる、もうひとつの問題がドライアイです。「モニターを見るとき、瞬きの回数が通常の約5分の1に減少するといわれています。涙の分泌量が減るうえ、目を開いているため涙が蒸発しやすくなるのです。
 
目の表面をおおう涙や脂質はバリアのような役割を果たすため、涙が不足してドライアイになると目の表面が傷つきやすくなり、目の充血、文字がぼやけるなど、さまざまな症状があらわれます。逆に目の表面のバリアが保たれていると、抗原などが侵入しにくくなり花粉症などの対策にもなります。
 
ドライアイが原因で、慢性的な白目の充血が起こることもありますが、ケアを間違えるとかえって悪化させることも。
 
「透きとおる白目に憧れ、充血をとる目薬を使う方もいますが、そのような目薬には多くの場合、血管収縮剤が含まれています。
 
一時的に白目は白くなりますが、薬の効果が切れると反動で血管が広がります。
 
血管の収縮・拡張を繰り返すことで、充血が慢性化することもあります」目の酷使により起こる美容のトラブルには、目の下のクマ、くすみがあります。これも目の周りの血行不良によるもの。
 
加えて、長時間のPC作業で首や肩がこり固まることで、目への血流がさらに滞りクマやくすみが目立ってしまうそうです。

眼科医がすすめるケアと対策

健康にも美容にも影響をおよぼす眼精疲労。秋山先生に教えていただいた、おすすめのケアと対策方法をご紹介します。

PC・スマホを20~30分見たら、目を20~30秒休ませる

PCやスマホを20分見たら、20秒ほど20フィート(6m)以上遠くを見ましょう。30分見続けたら、休ませる時間を30秒に増やします。
 
定期的に毛様体筋を動かして、目のストレッチをしましょう。遠くを見られない環境なら目をつむって休むのもOKです。

一石三鳥のホットアイマスク

ホットアイマスクで目の周りを温めると「筋肉をほぐす」「血流を促進する」「ドライアイ対策」の3つのケアが同時にできます。

さまざまな商品が販売されていますが、「ドライアイ対策」の観点で重要なのが温度。
 
まぶたのきわにマイボーム腺という脂の分泌腺があるのですが、その出口は分泌される脂で詰まりがち。この脂が融解するのが42度以上なのです。
 
分泌腺の循環がよくなれば、目の表面の脂質が増えてドライアイ対策になるというわけ。マイボーム線が詰まる原因には、加齢やメイクの洗い残しなどがあります。
 
秋山先生にホットアイマスクがなくてもできる、タオルを使った簡単なケア方法を教えてもらいました。

ホットタオルで目元ケア

1.ぬれタオルを3枚ほど用意し、それぞれラップでくるむ

2.電子レンジ(500W)で20~30秒ほど温める

3.タオルを取り出して広げ、温度をみながらまぶたにのせ温める ※ヤケドに注意

4.冷めてきたら新しいタオルに取り替える。15分ほど温めるのが理想的
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目の周りの筋肉をやさしく加圧&刺激する

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目の周りの筋肉を加圧して緊張をゆるませ、血行をよくするのも◯。手の指で加圧するときは、必ず目の周りの骨に向かって加圧しましょう。
◆注意点!

絶対に眼球は押さないこと。眼球を押して眼圧が上がると目の神経にダメージをあたえることがあるほか、網膜剥離などの原因にもなります。
眼球を傷つけないよう設計されているアイマスク機器を使うのもひとつの方法です。やさしい加圧&刺激でタッピングしてくれて、目もとを温めるヒーター機能もついているのでケア時間の短縮に。

日々の保湿&クレンジングが大切

目も目もとも、保湿が大切です。ドライアイの治療では、目の水分を保ち、角膜の傷の修復を促すヒアルロン酸点眼液などで足りない涙を補います。
 
また目の周りは特に乾燥しやすい部位。保湿力の高いアイクリーム、目もと用の美容液、美容オイルを取り入れましょう。
 
気をつけたいのは、クレンジングの仕方。メイクの洗い残しや、クレンジングの過度な摩擦は、目の周りの乾燥を悪化させる原因に。
 
目元専用のクレンジング剤を用意し、綿棒やコットンを使って落としましょう。まつ毛を清潔にするアイシャンプーをとり入れるのもおすすめです。
 
◆秋山先生おすすめ クレンジングとケアの手順

秋山先生が推奨するのは、顔全体のメイクを落としてからホットアイマスクでマイボーム腺の詰まりなどをケアし、最後に目元をWクレンジングする方法です。

リーディンググラス(老眼鏡)を適切に使う

近くを見るときにリーディンググラスを装着し、水晶体でなくメガネのレンズでピントを調節することで毛様体筋の負担を減らせます。リーディンググラスは40歳以降の方が使うことが多いので老眼鏡とも呼ばれますが、その響きに抵抗を感じずに20代や30代の方も積極的に取り入れましょう。
 
正視や遠視の方は、近くを見るときに特に毛様体筋が緊張するのでリーディンググラスの利用をおすすめします。近視の方も、遠くを見るためのメガネやコンタクトレンズをしていれば正視と同じ状態。軽い近視なら近くを裸眼で見る、強い近視なら弱い度数のメガネをかけましょう。

健康かつ美しい瞳のために、生活の見直しを

秋山先生は目の健康を維持するためには、生活の見直しが欠かせないといいます。
 
「問題の根本は、PCやスマホの使用が増えていることです。仕事の休憩中にスマホを見ていては、目の疲れはとれませんよね。休み時間には外に散歩に行くなど、ぜひ生活習慣の見直しを。仕事の合間にストレッチをするのもいいですし、ヨガやランニングもよいでしょう。
 
適度な運動は血流を改善し、自律神経が整うため目の疲れにも有効です」目の若々しさを保ちたい方は、食生活にも気をつけたいところ。
 
緑黄色野菜に含まれるルテインや、ビタミンA・ビタミンC・ビタミンEなどの抗酸化ビタミン、穀類・貝類・根菜類に含まれる亜鉛・銅などの抗酸化ミネラル、青魚に含まれるDHA・EPAは、目の老化予防によいとされています。「これらの栄養素をバランスよく摂るには、和食がおすすめ」と秋山先生。
 
目の健康のためには、アイケアをとり入れながら健康的な生活習慣を身につけるのが近道のようです。

インタビューを終えて

秋山先生のお話を聞き、休憩中はおろかベッドで眠る直前までスマホを見てしまう生活を反省するばかり。自分の目が充血していることに、今回の取材を通して気づきました。それに比べて秋山先生の瞳は美しく、教えていただいたケア方法は説得力が抜群。
 
正しいアイケアを実践して、生き生きとした瞳を目指したいものですね。


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