努力のプロセスに納得できるかどうかで、人生もカラダも変わる|柳田 将洋
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最終更新日2023.07.31
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「自分のカラダと向き合うことで常にバレーボールができるカラダに整える」プロバレーボール選手の柳田将洋選手。2022年7月で30歳になっても体のコンディションはとてもよい。365日のルーティンを徹底している。
1992年7月6日生まれ。東京都出身。O型。186cm。オフの日はドライブやゴルフ、犬の散歩などをして過ごす / 2010年3月 第41回全国高等学校バレーボール選抜優勝大会に東洋高等学校の主将として出場し、優勝を果たす。 / 2011年慶応義塾大学へ進学 / 2013年 全日本メンバーに登録 / 2014年10月 Ⅴプレミアリーグ・サントリーサンバ―ズに入団。2015/2016シーズンレギュラーラウンドでは全試合に出場し、最優秀新人賞に輝く / 2017年4月 サントリーサンバ―ズを退団し、プロ転向を発表 / 2017年5月 プロバレーボール選手として、ドイツ・Volleyball Bisons Bühl(バレーボール・バイソン・ビュール)と契約締結 / 2018年 ポーランド1部リーグ・Cuprum Lubin(クプルム・ルビン)にてプレー / 2018年4月 日本代表キャプテン就任。 / 2019年 ドイツ・United Volleys(ユナイテッド・バレーズ)契約締結 / 2020年 V.LEAGUEサントリーサンバーズに3年ぶりに復帰 / 2020-2021、2021‐2022 V.LEAGUE DIVISION1 MENで、サントリーサンバーズの2連覇に貢献、自身も2年連続ベスト6に輝く / 2022年 V.LEAGUEジェイテクトSTINGS 契約締結
柳田将洋オフィシャルサイト(https://yanagidamasahiro.club/)
Twitter:y_masaaaa_yk
Instagram:masahiro.8.0706
LINE:@yanagidamasahiro
“自分のため”の行動が、人のためになる
「東京オリンピックに向け、4年ほどかけて海外への挑戦などを繰り返してきました。結果的に僕は出場できませんでしたが、これまでは4年という長期間でプランニングしていたんです。しかしここ数年は短期的なプランニングを立てていかないと、一日一日をやりきることが難しいというフェーズになってきました。やはり“いつ競技生活を終えるか”という局面に、徐々に差し掛かっているんだと思います。
成績を出し続けているチームを離れるというのは、僕としては大きな決断が必要でした。ただそれが来シーズンに対してのアドバンテージになるかといわれたら、そうじゃない。むしろ、もう一回自分がやりたいことにチャレンジするほうが、やりがいやモチベーションに繋がると思ったんです」
コロナ渦で1年延期となり、21年に開催された東京オリンピック。本来の20年に行われていれば、柳田選手はキャプテンとして有明のコートに立っていたはずだ。努力が求めていた結果に繋がらないことも、人生にはある。
「みなさんがいう努力は、大体は結果ではなくプロセスですよね。そのプロセスがなければ結果が伴わない。ただ大事なのは“自分がやってきた努力のプロセスをどれだけ納得できるか”だと思うんです。結果に対して、腹を据える。自分が積み上げてきたプロセスを好きになれなかったり迷ったりしていたら、繋がった先でも結果は出せない。僕はそういう考え方をしています。それでも、やらなくても一緒かな?と思うこともあるけど、そう思ってる自分はあまり好きじゃない。やらなくていいことをやってるの?という話になっちゃいますからね。この時間はなんなんだ?っていうネガティブになるより、そのときそのときをやり切ったと思える日々を積み重ねることが、仮に結果が出なくても、次に繋げられるんじゃないかなと思っています」
東京オリンピックのメンバーに選ばれなかったことは、側から見たら挫折に映ったかもしれない。ただ後悔のない努力の先には、得られるものもあった。物事の側面は、決して一つではないのだ。
「(東京オリンピックに)出られなかったことはもちろん残念でしたし、出たかったなというのが正直なところ。ただ、それで現役引退しようとは思わなかった。周囲の方が僕以上に僕のことを心配してくれて、声を掛けてくれて、自分がやってきた意味やアスリートとして目指してきたものを改めて感じられたんです。昔はファンの方に応援されるのはうれしいけど、それに対して『競技以外でも何か返さなきゃいけないのか?』なんて思ってたんですよ。ただ今は、ファンの方とも“人対人”としていい関係性を築けていると実感しています」
ファンだけではない、チームのサポートメンバーの力も大きい。サントリーサンバーズ2021-22 Vリーグ優勝の経験が、よりその思いを強くした。
「僕が2年間サンバーズにいた時代は勝てなくて、それから海外でプレーして、チームを優勝させるために戻ってきました。若干のプレッシャーもあるなかでの優勝は、やはり忘れられません。
僕をサンバーズに誘ってくれたチームマネージャーの方は、よろこびを爆発させていました。自分はあくまで自分のためにがんばってるつもりだったけど、人の笑顔を見て“この人のためにもがんばってたんだ”と思えたことはうれしかったです。ただ“人のために”が先行してしまうと、自分の選択ではなくなってしまう。まずは、自分がそれをしたいかどうか。自分を高めて出した結果に対し、よろこんでもらえる。その軸はブレちゃいけないと思っています」
ジェイテクトSTINGSという新天地でも、“自分のために”挑戦は続く。そのことに柳田選手は「ワクワクしている」と話す。
「サンバーズで良い成績を残してきたけど、新たなチームではどれだけ通用するのか。自分の選手としての価値に自分自身期待して、トライしていきたい。まずはVリーグ優勝が、直近の目標。
それから今後、バレーボールという競技を多くの人に広めたいし、楽しいと思ってくれる若い人が一人でも増えてくれたらと思っています。
自分が海外やトップクラスの環境で経験してきたことを自分の中だけで終わらせてしまうのは、もったいないなと思ってて。バレー教室など直接触れ合えるような機会もつくっていけたらと考えています」
カラダもココロも大事なのは、セルフケアすること
7月で30歳になった柳田選手。「カラダが動かない感覚が増えてきた」ことに対しては、不安はないという。それは日々のルーティンでコンディションを整えているからだ。
「カラダが動かないことに対して、じゃあどうすれば“動く”にもっていけるのか、日々確認しながらやっています。バレーボールが休みの期間に『明日やれ!』と言われたら不安ですが、『シーズンに向けてやってくれ』と言われたら全然不安じゃない。そこに対してどうやっていくか、今までのやり方が大体決まっているから。何を食べて、何時に起きてなど変わらないルーティンに加え、環境が変われば新たなルーティンも増えていきます。できること、できないから補わなければいけないこと。それをいかに早く見極めてルール化して、しっかり行動に導けるかが重要だと思っています」
ルーティンは、維持ではなく、成長。ルーティンがあることで決断への思考速度も速くなり、思考がシンプルになる。結果、ゴールへの速度が加速していく。
「カラダのケアに関しては、僕たちのようなアスリートでなくとも、みなさん生活の中でどこかしらに負担は掛っているはず。大きい筋肉の割合を占める背中やお尻など、時間があるときに緩めることで日頃の生活も楽に過ごせるようになると思います。姿勢の歪みや肩や腰の痛みなどプロの手を借りるのもいいですが、できれば長期的にセルフケアしてあげるといい気がしますね」
カラダもココロも自分以外の誰かに委ねっぱなしにせず、ルーティンとしてセルフケアできる術を知っておくことは大事なことだろう。
「ボディケアツールは僕が海外に挑戦したときは、ロール型やボール型のボディケア製品を持って海を一緒に渡ってくれました。。本当にボロボロになるまで使い込んでいるので、体に馴染んでいます。経験上、海外はケアの体制があんまり整っていないので、いかに自分でセルフケア出来るかがすごく大事。自分のエネルギーを使わないという意味で人にケアしてもらうのも重要なことですが、施術する方により言っていることはどうしても変わってくる。“自分のカラダを自分で知る”重要性を感じています」
「自分を理解し、自分を大事にする」ことでカラダをケアしているが、マインドケアも同じように行っている。
「僕はまず物事を“自分に必要かどうか”で考えます。それが必要なことでなければ、そこに対して使うエネルギーは必要ない。人にどう思われるか以上に“自分がその物事に対して、どう思っているか”のほうが大事なんです。それは自分を大事にする上でも重要なこと。自分のことがわからず人のことを理解できるかと言ったら、きっとそうじゃない」
自分を大事にすることで、他者のことも大事にする。柳田選手は、そういう人だ。
「僕自身は、自分がやりたいことやなりたい姿を常にイメージして、この先もバレーボールを通じ、皆様にいろんなポジティブなニュースを届けていきたい。ぜひこれからも、引き続き応援していただけたらうれしいです」
インタビューを終えて
「若い頃と比べて……」と体力や集中力の低下など、思い通りにいかないことや不調を嘆くのは簡単だ。じゃあ何をするか。年齢と共に培われた経験や知識を糧に、自分のカラダと向き合い、ボディケアしていく。
柳田選手の習慣化された努力の一つに、ボディケアは大きな割合を占めている。ボディケアでカラダの維持を保つことは、ココロの平穏をも保つ。人生をより豊かにするための行動なのだ。