妊婦の体重管理|増えすぎた場合と増えない場合のリスクと対策を紹介
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最終更新日2024.03.06
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母子共に健康状態を確認するため欠かせない妊婦健診。エコー検査で発育状況がわかるという楽しみがある反面、次回の体重測定を考えると気が重い…という人も多いのではないでしょうか?妊娠中に体重が増えすぎてしまった場合、逆に体重が増えない場合、それぞれどのようなリスクがあるのかを踏まえ、今日から実践できる対策についてご紹介します。適切な体重管理で健康的なマタニティライフを送りましょう!
妊娠中に増加する体重の目安は?
妊娠すると、胎児や胎盤、羊水、子宮や血液の増加分などを合わせただけでも約8kgになります。これに加えて、お産や授乳のための脂肪のストックも必要です。つまり、妊婦にとって体重は出産に向け増えるべきものですが、増加量は多すぎても少なすぎてもいけません。
妊娠する前の体型(BMI)によって、体重増加量の目安は変わります。厚生労働省が設定する、妊娠全期間を通じての推奨体重増加量は以下のとおりです[1]。
- 妊娠前の体型がやせ(BMIが18.5未満):9~12kg
- 妊娠前の体型が普通(BMIが18.5以上25.0未満):7~12kg
- 妊娠前の体型が肥満(BMIが25.0以上):個別対応(25をやや超える程度なら5kgが目安)
※BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
また、1週間あたりの体重増加のペースは以下のとおりが適切とされています(妊娠中期~末期の場合)[1]。
- 妊娠前の体型がやせ:0.3~0.5kg/週
- 妊娠前の体型が普通:0.3~0.5kg/週
- 妊娠前の体型が肥満:個別対応
妊娠中に体重が増えすぎた場合のリスク
妊婦健診で体重に気を付けるように指示されてしまったという人のなかでも、特に妊娠前から肥満体型(BMIが25.0以上)の人は、必要以上の体重増加があれば厳しく指導されることも。体重が増えると以下のようなリスクが考えられます[2]。
- 母体側のリスク:妊娠合併症(妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病)のリスクが高い、帝王切開が必要になりやすい
- 胎児側のリスク:巨大児、神経管閉鎖障害、死産などのリスクが高い
【対策】ストレッチを取り入れる
妊娠中のダイエットとしておすすめなのが、自宅で簡単にできるストレッチです。体を動かして適度な刺激を与えることで、妊娠中のマイナートラブルの改善も期待できます。
妊婦がストレッチを行うメリット
妊娠中はどうしても体を動かしにくくなりますが、出産に向けた体力づくりや体力維持は大切なこと。ストレッチは、ハードな運動とは異なり妊娠中でも実践しやすいため、軽い運動としても最適です。
また、妊娠中は制限されることが多いうえに、出産への不安などからもストレスがたまりがちです。ストレッチで体を動かして気持ちがリラックスすることで、ストレスの軽減も期待できます。
さらに、胎児が大きくなると子宮が腸を圧迫して便秘がちになることも。こういった場合も、ストレッチで適度に体を動かすことで大腸が刺激され、便秘の改善に役立ちます。
妊婦がストレッチを行う際の注意点
このようにさまざまなメリットがあるストレッチですが、妊娠中は体の状態が通常とは異なるため、安定期に入ってから医師に相談して行うことが大前提です。安定期に入ってからも、お腹が張ったり違和感があったりする日は安静にしましょう。
ストレッチの際、お腹を圧迫するような動きや体勢は絶対に避けてください。妊娠中のストレッチはとにかく「無理なく」が基本です。少しでも苦しいと感じるような動作は避けましょう。運動中の心拍数は、1分間あたり140を超えないように注意が必要です。お腹が大きくなってくると、ちょっとしたストレッチでも疲れやすくなり、心拍数が上がりやすいので気をつけてくださいね。
また、慣れない体勢をとると転倒の危険性も高まります。特に、立って行う動作は必ず安定した場所で、バランスを保てる動きのみ取り入れてみてください。念の為、何かにつかまりながら行うと良いでしょう。
妊婦におすすめのストレッチ
妊婦の方でも実践しやすく、不調を改善するのに効果的なストレッチを3つ紹介します。
キャットストレッチ
腰まわりの筋肉をほぐすのにおすすめのストレッチです。血行改善効果が期待できます。
- 床に四つんばいの状態になり、背中をまっすぐに伸ばす
- 息を吸いながら胸を地面に近づける
- 息を吐きながら背中を軽くそらし、上を向いて腕に体重をかける
ワンポイントアドバイス
腰まわりを意識して、無理のない回数を行いましょう。
内ももストレッチ
内ももをしっかりストレッチして柔らかくすることにより、骨盤の歪み改善が期待できま
す。
- 足を伸ばして床に座り、足を広げる
- 背筋をしっかり伸ばしながら無理のない範囲で前屈する
- 膝が曲がらないように意識しながら30秒ほど伸ばす
ワンポイントアドバイス
内もも部分を意識し、足裏は床と垂直になるようにしましょう。
肩甲骨ストレッチ
肩甲骨の可動域を改善させるストレッチです。血流改善のほか、肩こり改善効果が期待できます。
- 背筋を伸ばしてイスまたは床に座る
- 両手を天井に向かってまっすぐ伸ばす
- 肩甲骨を引き寄せるイメージで両ひじを下に下げていく
- 肩甲骨同士をくっつけるように閉じる
ワンポイントアドバイス
途中で背中が曲がらないように注意!ゆっくり、呼吸を意識しながら行いましょう。
妊娠中に体重が増えない場合のリスク
妊娠中に体重が増えすぎてしまう場合の一方で、妊娠前の体型がやせ(BMIが18.5未満)で、理想の体重まで増加できていない場合はどうでしょうか。つわりがひどくて食べられない、体質的に太れない、という場合もありますが、もともとやせ体型の人が、産後の体型の崩れを気にして体重増加を最小限に抑えようとする場合も。しかし、過度な「やせ」は、お産の際だけでなく、子どもの将来にも悪影響を及ぼすと考えられています。
妊婦のやせは、世代を超えて影響する場合も
妊婦がやせていると、切迫早産や早産、低出生体重児(2500g未満)のリスクが高まりますが、このほかにも、子どもが成長した後に生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症など)になりやすくなるとも言われています。また、女児の場合はやがて成長して妊娠した際に、妊娠合併症(妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病など)が起こりやすくなります[3]。
なぜこういったことが起こるのかというと、母体がやせていることで、胎児が「外界は食べものが不足している」と判断し、飢餓状態でも生きていけるように「倹約型」の体質(代謝経路)にセットされるためです。少ない食べものを効率的にエネルギーとして使えるよう、燃費の良い状態で産まれてくるため、成長段階で普通に食べていても太りやすく、生活習慣病になりやすくなってしまうのです。
【対策】栄養バランスを意識する
もともとやせている人が妊娠をきっかけに体重を増やそうとしても、なかなか難しいのが現実です。「どうにか体重を増やさなければ」と、ジャンクフードやお菓子など、高カロリーで栄養が乏しいものをたくさん摂ろうとする人もいますが、栄養バランスを崩してしまい、もちろん体に良くありません。毎日の食事を、主食、副菜、主菜、牛乳(乳製品)、果物を揃えた献立にすれば、自然と栄養バランスが整いやすくなりますよ。
例えば、妊娠末期や授乳期では以下の量を目安にしてください(1日分)[5]。
- 主食:ごはん中盛り2杯、うどん1杯、パスタ1皿
- 副菜:野菜炒め、煮物、サラダ、具だくさん味噌汁、青菜のお浸し
- 主菜:ハンバーグ、納豆、焼き魚
- 牛乳(乳製品):牛乳瓶1本、ヨーグルト1個
- 果物:みかん2個、リンゴ半分
「ログ」で生活習慣を見直そう
個人差はありますが、妊娠中はただでさえ体が重く、あまり動きたくないもの。生活上の制限に対するストレスからつい食べ過ぎてしまったり、急に甘いものが食べたくなったりと、体重以前に自分自身をコントロールすることが難しいものです。
そこで、体重を増やさないように指示された場合でも、体重をもっと増やすよう指示された場合でもおすすめしたいのが、妊娠中の「ライフログ(生活の記録)」です。毎日決まった時間に測った体重と食べたものを記録しておくと、改善すべき食習慣に気づきやすくなりますし、妊婦健診などで医師に記録を見てもらえば具体的なアドバイスをもらいやすくなります。コツは、1日のカロリーの所要量から逆算して「何をどれくらい食べても良いのか」を考えてみることです。
さらに、以下も参考にして実践してみましょう。
- 3食規則正しく食べる
- 食事量は朝食を一番多くし、その次に昼食、夕食は一番少なくする
- 甘いものが食べたければ昼にする
- 20時以降、もしくは就寝3時間前には食べない
- 単品メニューではなく、定食のような献立を選ぶ
- よく噛んでゆっくり食べる
これらのことは妊娠中に限らず、健康的な食生活の基本です。妊娠中はむしろ、それを身につけるよいチャンスかもしれません。
ストレスを最小化することも大切
妊娠中の体重の増減は、ストレスの感じ方やつわりなど、個人差が大きく影響される面もあります。体重管理は大切なものですが、そのことでさらにストレスを感じすぎるのも良くありません。食べ方を工夫して、たまには外食やスイーツも楽しみストレスを発散してみてください。つらいこともありますが、それも産まれてくるまでという限られた期限のものです。ぜひ、楽しんで体重管理と向き合ってみてくださいね。
参考文献
[1]「健やか親子21」推進検討会. 「妊娠期の至適体重増加チャート」について. 妊産婦のための食生活指針,2006. https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3a4.pdf(参照2019-10-25)
[2]日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会. 妊娠前の体格や妊娠中の体重増加量については?(CQ010) ,産婦人科診療ガイドライン―産科編2017
[3]荒田尚子. 胎児プログラミング仮説の基礎. ペリネイタルケア 2018; 37(10): 23-27.
[4]厚生労働省. 妊産婦のための食習慣. http://sukoyaka21.jp/syokuiku(参照2019-10-25)