60代でフルマラソン3時間半の方も!生涯現役の身体作り|小島佑司
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最終更新日2024.10.18
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「人生100年時代」。しかし、その100年のうち、健康でアクティブに動くことができるのは何年でしょうか。多くの人が生涯現役で豊かに生きていきたいと望むものの、腰痛や膝の痛みなど不調が出てくるのがミドル、シニア世代です。そこで、中高年のケガ予防やケアのスペシャリストとして活躍する小島佑司さんに、生涯現役を目指す身体作りについてお話をお聞きしました。
元クロスカントリースキー選手。現役中に、傷害予防とスポーツパフォーマンス向上を目的とした資格「NSCA-CSCS」を取得し、選手引退後はスポーツの指導員などを経て、4支点運動スティックサイズを開発。現在は1日10組限定の会員制パーソナルジム「スティックチャーム」で、アクティブシニアの生涯現役を支えています。
スティックチャーム HP
生きがいが元気をつくる、アクティブシニア
健康寿命という言葉が使われるようになり、元気で健康なセカンドライフを過ごしたい人が増えています。
シニアと呼ばれる世代になっても年齢に関係なく、生きがいを持って活動的に人生を楽しむ人をアクティブシニアと呼びますが、生涯現役を目指す方たち集うジム「スティックチャーム」を主宰する小島佑司さんは、アクティブシニアを3つのポイントから定義します。
「私が考えるアクティブシニアは、①生きがいがある、②生きがいを楽しめるお金、時間の余裕があり身体が健康である、③生涯を通じて学習し続ける意欲がある、の3つがある、または目指す方たちです。特に3つめは、身体の機能を維持していくためには、自分自身も身体について学んでいかなければならないのでとても大切です。そしてこの3つが揃うことで生涯現役が目指せると考えています。実際に当ジムに通われるのは、生涯現役を目指し、フルマラソンを3時間半で走る方、年間50回登山をする方、会社の経営者、お医者様などエネルギッシュでアクティブシニアの方が多いんです。一方で、変形性膝関節症や腰椎間板ヘルニアなどから身体の一部をかばう癖がついて筋肉バランスが崩れ、自由に歩くことが難しい方もいます。そういった方は筋膜リリースなどでかたまった筋肉を緩め、改めて脳に正しい姿勢や身体の状態を覚え込ませるトレーニングをしていくのですが、その結果、日常生活はもちろんハイキングや登山などにも行けるようになった例が何人もいらっしゃいます。その方々も自分自身で身体の仕組みを覚えて、学ぶことを楽しみながら新しい自分に挑戦し続けています」
生涯現役でいるためのポイントとは
では、生涯現役を目指すためには、トレーニングの他に日常生活の中でどのような点に気を付けていけばよいのでしょうか。
「筋肉や関節の痛みの95%は、身体の歪みが原因であると考えています。残り5%は病気や事故などの避けられないものです。身体の歪みは日常生活の些細な行動で生まれ、それらが長年蓄積された結果です。特に負荷が大きいのは、頭の重さです。成人の頭の重さは約4.5kgと言われていますが、ポジションが正常であれば重力負荷を受けても骨格は崩れません。しかし例えばスマホを見ようと頭を下に向けると、中心よりも頭が前に約5センチ出ます。それだけで、背中には約14キロの重力負荷がかかるんです。これが背中の筋肉の負担になります。ジムなどで正しい頭の位置を覚え、日常生活の動きの中で常にその状態を保つように気を付けていく。そういう状態にもっていけると良いでしょう。加えて、継続的な有酸素運動が大切です。ケガをしにくい正しい姿勢で有酸素運動を行うことで、腸の動きも良くなり、エネルギーを生産する細胞であるミトコンドリアにも良い刺激になります。
食事面では活性酸素の対策を重視し、抗酸化作用が高い食品をお勧めしています。また冷たいサツマイモなどの冷えた糖質で食物繊維をとったり、複数種類のキムチやヨーグルトなどで複合的に発酵食品をとったりするのも良いですね。特に発酵食品に関しては実践しているアスリートも多いんですよ」
脳と身体のバランスをリセット! 四つん這いの姿勢
元気なセカンドライフを送るために必要な身体のバランス。しかし、無意識に続けてきた身体や動きの癖は、意識していてもすぐには治らないことから、日々、身体のバランスをチェックしてリセットしていくと良いとのこと。
そこで、脳と身体のバランスをリセットする方法を教えていただきました。
つま先を立てた状態の四つん這いの姿勢を取り、腹式呼吸をします。この時、腕と胴体、足の間がきれいな四角形になるのが理想。手の甲は肩の下に、膝は腸骨の下に置きます。腰は反らせ過ぎず、腹筋に力を入れます。バランスが崩れている人がポーズをとると、上半身が前のめりに感じたり、腕や足に不用意な力が入っているように感じたりしますが、正しい姿勢を覚えることで徐々に違和感はなくなります。
四つん這いの姿勢から右手、左足を上げてバランスを取ります。10秒ほど。左手、右足も同様に。体幹が弱く、バランスが崩れていると難しいので、できる範囲で構いません。身体のバランスが整ってくると、楽にできるようになります。
腸腰筋をケアして腰痛知らずの身体に
中高年に多いお悩みのひとつ、腰痛。特に、骨盤が後傾している人に多いトラブルです。骨盤が後傾していると腸腰筋が常に緊張状態になるため硬くなります。逆も同様で、腸腰筋が張ると骨盤が後傾します。腸腰筋をやわらかくすることで、身体のバランスが整います。
腸腰筋のケア
腸腰筋は、腸骨の内側の奥にあるため、振動マッサージボールなどで内側の全体に刺激を入れて、周辺の筋肉とともに緩めます。その際に、ボールが腸骨に直接当たらないよう注意しましょう。
腸骨内側に振動マッサージボールを当てた状態でうつ伏せになって足を好きな広さに広げ、自重をかけます。腸腰筋全体に刺激が入るよう、肋骨下や横っ腹など少しずつ振動マッサージボールを移動させて、腸骨付近全体をケアします。
なお、腸腰筋が硬い場合は、ただ自重をかけているだけでも痛みがあるため、ボールは振動させなくてもかまいません。最大で2分ほど行い、あまりにも痛いようなら短くしてもOKです。最低でも14日間連続で行います。
大臀筋、梨状筋のケア
前をケアしたら次は後ろをケア。大臀筋から梨状筋にかけて、一回り小さい振動マッサージボールを当てます。ボールを当てる側の足は、あぐらをかく時の形にし、腰と臀部を床に押し付けるようにしてゴロゴロと動かして緩めます。
内転筋、腰回りのケア
前と後ろをケアすると、それ以外の緊張している部分にだるさや違和感が出てきます。一番張っている箇所が緩んだことで、次に張っている箇所が気になるようになるためです。内ももの付け根や内転筋、骨盤に関係する大きな筋肉、腰回りなどが気になる人が多いので、気になった箇所をカバーします。太ももや腰回りは電動フォームローラーがおすすめです。
今日が一番若く、一番良い状態
いくつになっても健康で元気に過ごすことができる身体をつくっていくには、バランスが重要ですが、最も大切なのは「生きがい」だと小島さんは指摘します。
「自分は何が好きか。何が楽しいと感じるのか。意外とそれを分かっていない人は多いと思います。他人の「イイネ!」ではなく、自分の「イイネ!」探しが大切です。例えば、ハイキングや登山を楽しむにしても百名山のような誰かがおすすめしているものの中から選んでみたり、御朱印巡りのような流行りものをとりあえず試してみたり。そういった誰か他の人のおすすめではなく、自分自身が好きだからやる。それを生きがいにするといったメンタリティーがある方は、心も元気でアクティブに人生を捉えることができています。
私自身は、スポーツや運動が『幸福度の高い社会形成』に役立つと信じています。幸せホルモンと呼ばれるセロトニンなどは有酸素運動で増え、プラス思考へと導きます。実際にアクティブシニアの方々は『昔は良かった』といった懐古趣味ではなく、常に今が一番楽しいと考えていて、それこそが生涯現役を実現し、幸せな人生をおくるための大切な要素です。
アクティブシニアの方々は健康になるために運動をするというよりは、運動を楽しんでいる結果、アクティブになっているようです。そして、運動をするための身体づくりを始めるなら“一番若い今日”が最適です」
インタビューを終えて
病院に通っても身体の痛みや不調がなかなか良くならない。そんな方々を数多くトレーニングして、運動を楽しめる状態へ戻れるようサポートしている小島さん。生涯現役を目指すためには人体のつくりを熟知した知識からくるサポートを受けることはもちろんですが、一番大事なのは「生きがいがあること」という言葉が印象的でした。